「がん保険はいらない」は本当?公的保険の限界と加入者の後悔から学ぶ必要性
「日本人は2人に1人ががんになる」と言われる時代。テレビCMやネット広告でがん保険の宣伝を目にしない日はありません。しかし、その一方でSNSやマネー雑誌では「がん保険はいらない」「高額療養費制度があるから不要」という意見も根強くあります。
「結局、どっちが正解なの?」と迷ってしまうのも無理はありません。将来の安心のために毎月安くない保険料を払うべきか、それとも貯金に回すべきか……。
この記事では、がん保険不要論の根拠となっている「公的制度の仕組み」を正しく理解した上で、実際にがんを経験した人がどのような場面で後悔しているのか、そのリアルな現実を深掘りします。あなたのライフプランにがん保険が必要かどうか、その判断基準を明確にしていきましょう。
1. 「がん保険不要論」の根拠と公的医療保険の仕組み
なぜ「がん保険はいらない」という声があるのでしょうか。その最大の理由は、日本の公的医療保険制度が非常に充実しているからです。
高額療養費制度の安心感
日本では、どんなに医療費がかさんでも、1ヶ月に支払う自己負担額には上限があります。これが「高額療養費制度」です。一般的な所得層(年収約370万〜770万円)であれば、月間の自己負担額は概ね9万円前後で済みます。これを知ると、「数百万円の治療費がかかっても、月10万円程度なら貯金でカバーできる」と考える人が増えるのは当然のことです。
傷病手当金による所得補償
会社員や公務員であれば、病気で働けなくなった場合に健康保険から「傷病手当金」が支給されます。給与の約3分の2が最長1年6ヶ月間支払われるため、生活がすぐに破綻することはありません。
これらの制度を背景に、「わざわざ高い保険料を払って民間の保険に入る必要はない」という結論に至るのが不要論の主な論理です。
2. 知っておきたい「公的保険」ではカバーできない支出の落とし穴
公的制度は確かに強力ですが、万能ではありません。実は、がん治療において家計を圧迫するのは「健康保険が適用される医療費」だけではないのです。
差額ベッド代と食事代
入院した際、プライバシーを確保するために個室や少人数部屋を希望すると「差額ベッド代」が発生します。これは全額自己負担であり、高額療養費制度の対象外です。長期入院となれば、1日あたり数千円から数万円の支出が積み重なり、数十万円単位の出費になることも珍しくありません。
先進医療や自由診療の選択
がん治療は日進月歩です。厚生労働省が認めた「先進医療」や、国内未承認の抗がん剤を使用する「自由診療」を選択した場合、その技術料や薬剤費は全額自己負担となります。例えば、重粒子線治療や陽子線治療などの先進医療は、1回につき約300万円程度の費用がかかるケースが多いですが、これらは公的保険の枠外です。
治療中の生活費と「見えないコスト」
入院せず通院で治療を続ける場合も、交通費やウィッグ代、サプリメント代、家事代行サービスの利用など、健康な時には想定していなかった出費が次々と発生します。特に、副作用で体力が落ちている時期のタクシー移動などは、地味ながら家計に重くのしかかります。
3. 「入っておけばよかった」がん保険未加入者の後悔
実際にがんを患った際、保険に入っていなかった人がどのような壁にぶつかるのか。代表的な後悔の声を見てみましょう。
収入減少と治療費のダブルパンチ
自営業やフリーランスの方にとって、がん治療による休業は即、収入ゼロに直結します。傷病手当金がないため、貯金を取り崩しながら高額な治療費を払う精神的ストレスは計り知れません。「お金の心配がストレスで治療に専念できない」というのは、最も多く聞かれる後悔の一つです。
選択肢が狭まる辛さ
「お金があれば、あの先進医療を受けられたかもしれない」「お金があれば、家族に負担をかけずに個室を選べたのに」。治療の選択肢を「医学的な最善」ではなく「経済的な理由」で妥協せざるを得ない状況は、本人にとっても家族にとっても大きな悔いとなります。
住宅ローンと団体信用生命保険の盲点
住宅ローンを組んでいる場合、死亡時には団体信用生命保険(団信)でローンが完済されますが、通常のがん診断では完済されません。「がん特約」付きの団信に加入していれば安心ですが、そうでない場合、治療を受けながら重い住宅ローンを払い続ける必要があり、生活苦に陥るリスクがあります。
4. がん保険が必要な人・不要な人のチェックリスト
がん保険が必要かどうかは、現在の貯蓄額、職業、家族構成によって大きく異なります。
【がん保険が必要な可能性が高い人】
貯蓄が少ない人: 急な出費(100万〜200万円程度)ですぐに家計が立ち行かなくなる場合。
自営業・フリーランス: 公的な休業補償(傷病手当金)がないため、生活費を確保する必要がある場合。
子供が小さい家庭: 教育資金を確保しつつ、親の治療費を捻出しなければならない場合。
最新の治療を選択したい人: 先進医療特約などで、高額な治療費の不安を解消したい場合。
【がん保険がいらない可能性がある人】
潤沢な資産がある人: 治療費や生活費をすべて現預金で賄える(目安として500万円以上の余剰資金がある)場合。
公務員や大企業の会社員: 付加給付などの福利厚生が非常に充実しており、自己負担が極めて少なく済む場合。
シンプルな生活を好む人: 差額ベッド代などのオプションを一切希望せず、標準治療のみで納得できる場合。
5. 失敗しないがん保険の選び方と賢い活用法
もし「やはり安心のために加入しておきたい」と考えるなら、以下のポイントを意識して選ぶのが賢明です。
診断給付金(一時金)を重視する
入院日数に応じて支払われる「入院日額」タイプよりも、がんと診断された時点でまとまった金額(100万円など)が受け取れる「診断給付金」タイプが現在の主流です。がん治療の短期入院化・通院化が進んでいるため、使い道の自由度が高い一時金は非常に役立ちます。
先進医療特約を付加する
月々数百円程度のわずかな保険料で、数百万単位の先進医療費を全額保障してくれる「先進医療特約」は、がん保険の最大のメリットの一つです。これは実損補填型が多く、高額な自由診療への備えとして非常にコスパが良い選択です。
免責期間に注意する
ほとんどのがん保険には、加入後90日間程度の「免責期間(待ち期間)」があります。この期間中にがんと診断されても給付金は受け取れません。「怪しい」と思ってから加入しても間に合わないため、健康なうちに検討することが重要です。
まとめ:自分にとっての「リスクの大きさ」を再確認しよう
「がん保険はいらない」という言葉は、一部の人にとっては真実ですが、すべての人に当てはまるわけではありません。日本の公的医療制度は確かに素晴らしいですが、それはあくまで「標準的な生活を守るための最低限のセーフティネット」です。
がんという大きな病に直面したとき、お金の心配をせずに治療に専念できる環境、そして自分らしい治療の選択肢を持てることは、回復に向けた大きな力になります。
まずは自分の家庭の貯蓄額、福利厚生、そして万が一の時にどのような生活を送りたいかを想像してみてください。もし少しでも不安を感じるなら、少額からでも「お守り」として加入しておくことは、決して無駄な投資ではありません。
大切なのは、「なんとなく入る」のでも「なんとなくやめる」のでもなく、制度とリスクを正しく知った上で自分なりの決断を下すことです。