自分の土地や財産を「時効取得」されないための完全対策ガイド
「知らない間に、自分の土地が他人のものになってしまうことがある」と聞いて、驚いた方もいるかもしれません。これが時効取得という制度です。
今回は、大切な財産を時効取得されないためには、どのような対策を取れば良いのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
そもそも「時効取得」って何?
時効取得とは、他人の物を一定期間にわたって所有の意思をもって占有し続けることで、その物の所有権を取得できるという民法上の制度です。これは取得時効とも呼ばれます。
取得時効が成立するには、主に以下の2つの要件があります。
占有の期間:
20年間:所有の意思をもって他人の物を占有し、その間に善意(他人の物だと知らなかったこと)でも悪意(他人の物だと知っていたこと)でも関係なく成立します。
10年間:所有の意思をもって他人の物を占有し、かつ占有開始時に善意で、過失がない場合に成立します。
占有の態様:
所有の意思をもって占有すること。
平穏かつ公然と占有すること。
つまり、ただ物を置いているだけでは成立せず、「自分のものだ」という意識を持って、誰にも文句を言われることなく、堂々と占有を続けることが時効取得の要件となります。
時効取得されないための具体的な対策
では、自分の財産を時効取得されないためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。ここでは、具体的な対策をいくつかご紹介します。
1. 占有状態を中断させる
最も効果的な対策は、相手方の占有を中断させることです。具体的には、以下のような方法があります。
裁判上の請求:
相手方に対して「その土地(建物)は私のものですから、立ち退いてください」という所有権確認訴訟を起こす。
土地の明け渡しを求める訴訟を起こす。
裁判外の請求:
内容証明郵便などで「占有をやめるように」と催告する。ただし、催告だけでは時効の完成を6ヶ月間猶予する効果しかないため、この期間内に裁判上の手続きを取る必要があります。
2. 定期的な現地確認と利用
自分の所有する土地や建物が、他人に勝手に利用されていないか、定期的に現地を確認することが重要です。
土地の利用:
定期的に固定資産税を支払っているからといって、安心はできません。相手方が勝手に土地を耕作したり、建物を建てたりしていないか確認しましょう。
自分の土地であることを示すために、所有者自身が積極的に利用することが大切です。
境界線の確認:
隣地との境界線が曖昧な場合は、測量を行うなどして、境界をはっきりさせておくことも有効です。
3. 占有者を特定する
もし、自分の土地を占有している人がいる場合は、その人が誰であるか、どのような目的で占有しているのかを特定しましょう。
相手が「借りている」と主張すれば賃貸借契約となり、所有の意思がないため時効取得は成立しません。
相手が「無断で使っている」と認めた場合も、占有開始から所有の意思がないため時効取得は成立しません。
このように、相手方の占有が「所有の意思をもって」行われていないことを証明できれば、時効取得は阻止できます。
放置しないことが最大の防御策
時効取得は、土地や財産を長期間にわたって放置してしまうことで起こりやすくなります。自分の所有物だからといって、無関心でいると、知らない間に他人に権利を奪われてしまうリスクがあるのです。
大切な財産を守るためにも、日頃から関心を持ち、少しでも不審な点があれば早めに行動することが、時効取得を防ぐための最大の防御策と言えるでしょう。