神社の守り神「狛犬」は、なぜ「阿吽(あうん)」の形をしているのか?その深い意味に迫る
神社の参道を歩いていくと、入り口や拝殿の前で、左右に一対の石像が鎮座しているのを見かけますよね。そう、狛犬(こまいぬ)です。
その存在はよく知られていますが、実はこの狛犬たち、左右で口の形が違うことに気づいていましたか?一方は口を開け、もう一方は口を閉じています。この形は単なるデザインではなく、「阿吽(あうん)」という、深い意味が込められた日本の文化と信仰の象徴なのです。
この記事では、狛犬が阿吽の形をしている意味やその起源、そして狛犬にまつわる知られざる雑学について、わかりやすく解説します。
狛犬の「阿吽」とは何か?その深い意味
狛犬の左右の口の形は、それぞれ「阿(あ)」と「吽(うん)」を表しています。
「阿(あ)」の狛犬: 口を開け、最初の音「あ」を発している形です。これはサンスクリット語のアルファベットの最初の音であり、「物事の始まり」や「宇宙の始まり」を象徴しています。
「吽(うん)」の狛犬: 口を閉じ、最後の音「うん」を飲み込んでいる形です。これもサンスクリット語の最後の音に由来し、「物事の終わり」や「宇宙の終わり」を象徴します。
この二つを合わせることで、「阿吽」となり、「始まりから終わりまで」「この世のすべて」を意味しているのです。狛犬は、この世のすべてを司る守り神として、神社に参拝する人々を見守っているのです。
狛犬の起源と「阿吽」の繋がり
狛犬のルーツをたどると、インドの仏教思想に深くつながっていることがわかります。
元々、狛犬の原型はインドの「獅子」であり、仏教とともに中国、朝鮮半島を経て日本に伝わりました。仏教では、お寺の門に「仁王像」という一対の守護神が安置されていますが、この仁王像もまた口を開けた「阿形(あぎょう)」と口を閉じた「吽形(うんぎょう)」の阿吽の形をしています。
このことから、狛犬が阿吽の形をしているのは、仏教思想が深く関わっていることがわかります。仏教が伝来する中で、日本の神道と融合し、神社の守り神である狛犬にその思想が取り入れられたと考えられているのです。
【おもしろ雑学】狛犬をさらに深く知るための豆知識
知れば知るほど面白い、狛犬にまつわる豆知識をいくつかご紹介します。
「狛犬」と「獅子」の違い: 奈良時代に日本に伝わった当初は、左右ともに獅子の姿をしていましたが、平安時代になると、口を開けた「獅子」と、角が生え口を閉じた「狛犬」に分かれるようになりました。後に、両方とも「狛犬」と呼ばれるようになったのです。
****狛犬の役割: 狛犬は単なる飾りではありません。その役割は、神社に邪悪なものが入るのを防ぐ「門番」です。狛犬が入り口にいることで、神聖な空間を守っているとされています。
性別の違い: 一般的に、向かって右側にいる口を開けた「阿形」がオスで、左側にいる口を閉じた「吽形」がメスだと言われることもあります。
まとめ:狛犬は、日本の文化と信仰が融合した象徴
神社にいる狛犬が阿吽の形をしているのは、決して偶然ではありません。そこには、遥か遠いインドから伝わった仏教思想と、日本の古来の信仰が見事に融合した、日本独自の知恵と文化が息づいているのです。
これからは神社に参拝するたびに、狛犬の口の形に注目してみてください。きっと、今までとは違う、日本の歴史と文化の奥深さを感じることができるはずです。